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えじぷとの文化、芸術、エンターテインメント堪能記です。 twitter: @sukkarcheenee facebook: http://www.facebook.com/koji.sato2
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昨日、フラットの大家さんに家賃を払った。
一流金融マンでカイロで結構名の通った家の出の彼は、この国ではかなりリッチなクラスに所属しておられるはず。現在、郊外の高級住宅地Sitta October Cityに一戸建てヴィラを建設中で、その間、近所のヴィラを借りて住んでいる。車は4~5万ドルはするボックスカー。

この日の家賃の受け渡し場所として彼が指定したのは、Four Seasons Hotelのロビーカフェ。注文したコーヒーやジュースは、当然にして太っ腹の彼もちだ。

とっても気さくでフレンドリー、まだ40代前半くらいと思われる彼は、
「やあ、元気?」と月並みな挨拶をしたあと、自分の仕事の状況などを話しはじめ、3ヶ月前とまったく同様に、エジプト社会の問題についてとくとくと話し始めた。

とにかく、この国の問題は、貧しいモノたちが働き者のリッチマンと政府に寄生して、ぜんぜん働かないことにある、と。

貧しい人たちやその立場を一部代弁するような評論家たちは、この国の問題は、たいして仕事もしないで甘い汁を吸う既得権者たちだと文句を言う。

お互いにお互いを批判しあって、交わることのない二つのクラスの分断は深刻だ。

これも、長い権威主義体制が生み出した弊害なのだろう。政治的自由を拡充してやることで、立場や利害の異なる人たちがそれぞれのインタレストをぶつけあう場がまったくないから、こうした社会問題の認識や議論もイヤに風通しが悪い。どちらも間違っていないけど、どちらも正しくはない感じといったらいいだろうか。

変化には適切なスピードというものがある。それは否定しない。でも、この人たちには絶対的に変化が必要だ。問題は経済的貧困よりも、あまりの風通しの悪さに人々が窒息しそうなことにある。


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仕事が立て込んで、客人の空港送迎が何回も重なった折、カバンにしのばせた『野間宏責任編集 現代アラブ文学選』に収められたガッサン・カナファーニー著「ハイファに戻って」を読んだ。パレスチナの抵抗文学を代表する作家ガッサン・カナファーニーのそういう作品が邦訳されていることをずいぶん前に知っていながら、何年もほうったらかしにしていたのを、ようやっと読んだ。

イスラエルが建国された1948年のハイファ。ユダヤ人の武装勢力によって組織的に海岸線へと追い立てられ、そして祖国を立ち去らざるを得なかったパレスチナ人の夫婦が主人公。しかもこの二人は、生まれたばかりの息子を我が家に置き去りにせざるを得ないという悲しい運命を生きなければならなかった。

それから20年。第三次中東戦争の結果、ヨルダン領となっていた西岸がイスラエルに占領され、皮肉にも西岸とイスラエルの間での人の行き来が可能になった。その機に、西岸に追いやられた人たちが故郷をお忍びで訪ねることが多くあったようで、主人公の夫婦も勇気をふりしぼって、故郷のハイファに息子を置き去りにした我が家を再訪することにしたのだった。

息子はイスラエルの夫婦に引き取られ、イスラエル人として育てられ、そして軍人になっていた。その息子が実の親に向けた言葉は、あまりにも痛烈だ。

「あなたが思慮深く、分別ある人間が振舞うべきであるように行動していたら、このようなことは皆、起こらずに済んだのです。」

「あなた方はハイファを出るべきではなかった。もしそれができなかったのなら、如何なる代価を支払おうとも、乳呑児をベッドに置き去りにすべきではなかった。そしてもしこれもまた不可能であったと言うのなら、おめおめとハイファへ帰ってくるべきではなかった。あなたはそれもまた、不可能だったと言うのですか?二十年が過ぎたのですよ。二十年が。そのあいだあなたの息子を取り返すために何をしたのですか?もし私があなたの立場にあったら、私はそのために武器をとったでしょう。武力に勝る手段がありますか。なんて無力な人たちなんだ!なんて無力な!」
 
こんな言葉を自分の子どもに吐かれることを想像してみる。あんまりおぞましくて、自分は状況を直視できないのではないかと思う。主人公のサイードもまた衝撃を受け傷ついたのは当然だが、ここで彼が息子に返した言葉が、パレスチナ人のイスラエル人と国際社会に対してぶつけたいメッセージを的確にかつ強烈に伝えていると思われ、僕は忘れないようにどこかに書き留めておこうと思わずにはいられなくなった。

「しかし、いつになったらあなた方は、他人の弱さ、他人の過ちを自分の立場を有利にするための口実に使うことをやめるのでしょうか。そのような言葉は言い古され、もうすりきれてしまいました。そのような虚偽で一杯の計算づくりの正当化は・・・・・・。ある時は、われわれの誤りはあたな方の誤りを正当化するとあなた方は言い、ある時は、不正は他の不正では是正されないと言います。あなた方は前者の論理をここでのあなた方の存在を正当化するために使い、後者の論理をあなた方が受けねばならぬ罰を回避するために使っています。私にはあなた方が、この奇妙な論理の遊戯を最大限にもてあそんでいるように見えます。あなた方は新たに、われわれの弱さを駿馬にしたててその背に乗ろうとしている。いいえ、私はあなたがアラブ人だと規定してこんなアラブ的なたとえをつかって話しているのではありません。私は今、人間はそれ自体が問題を孕んだ存在だと言うことを誰よりも理解しています。」

ここで話されている「誤り」と「不正」を「暴力」とか「テロ」という言葉に置き換えてみると、彼のいいたいことがよくわかるかもしれない。

そして、彼岸の人たちとわかりあう可能性に絶望したサイードは、イスラエルと戦うために家を出ようとしているのを自分が引き止めてしまったもう一人の息子に対して、自分がラマッラーに戻るまでに彼が親の言うことをきかずに戦いに出ていってくれたらいいと願う。でも、サイードは、その願いは、手の届かないところに行ってしまった実の息子に象徴されるように、永遠に取り戻すことのできない故郷を取り戻そうとする、まったく不可能な願いであることを承知のうえで、それでも、そう願わずに居られなかったのだろう。


その絶望の深さを思い知らされる、すごい力をもった文学だ。



2010.3.31付NEWSWEEK日本版に「イラクから来たヘビメタ野郎」という記事を発見。そういえば、ネットニュースで"Heavy Metal in Baghdad"という映画のことを見たことがあったなと思い出しながら、このAcrassicauda(ラテン語で「黒いサソリ」の意味だそうな)の記事を読んだ。

サダム時代の抑圧から自由になれると思ったのもつかの間、今度はイスラム過激派の標的として追い回され、その危険から難民としてイラクを脱出して、シリアやトルコを転々とした末に、1年前からアメリカに住んでいるという。

3月にデビューEP"Only the Dead See the End of the War"をリリースして芸能界入りしても、いまのところIRC(国際救済委員会)などから斡旋されるアルバイトなどをしながら、狭い部屋に家族がすし詰めでやっとこさ暮しているということだ。

Youtubeで検索したら、このデビューEPからのシングルカット、"Garden of Stones"のビデオクリップを発見した。



音はメタリカに近い作りという印象。十分な練習環境がもてなかったとは思えない演奏力だし、歌にこめられた戦争のリアリズムはホンモノだから、これからますます注目されて、いいバンドになっていくかもしれない。

彼らを紹介した映画、"Heavy Metal in Baghdad"をどこかで見れないかなと思ってサーチしていたら、
こちらにありました。
在留邦人有志のビラーディーの会で練習中の楽曲その1

エジプトのゴールデンエイジを飾るAbdel Halim Hafezの"Ahwak"(I love you)。なんて美しい、ロマンチックな歌なんだー!!


楽曲その2

こちらは児童向け。でも、歌詞がどんどん流れていくので、覚えるのに一苦労。

あと1ヶ月でこの2曲を覚えて、すでに秋祭りで発表済みの2曲を加えて、4月末、エジプト人の日本語学生の前で発表予定。

がんばります!

2週間の海外出張から休む間もなく怒涛のイベント漬け2週間もなんとか乗り切り、ようやく訪れた凪の時間が愛おしく、近所のアメリカン大学付属書店に出かけ、本あさりをしてみた。

アウトプット続きで枯れてきたので、仕事がちょっと落ち着く春の季節にエジプトや中東のことをもう少し理解すべく、がんばって読書などしてみようと考えてみた。といっても、たいてい冒頭の数十ページで飽きてしまって、読みきらない本のほうが多いのだけれど。

今回買ってきたのは、以下の6冊。

1. "See of Poppies"  by Amitav Ghosh
2. "Contemporary Iraqi Fiction"
3. "The Arabu National Project in Youssef Chahin's Cinema"  by Malek Khouri
4. ”Global Dreams--Class, Gender, and Public Space in Cosmopolitan Cairo"  by Anouk de Koning
5. "Civil Society Exposed--The Politics of NGO's in Egypt"  by Maha M. Abdelrahman
6. "Egypt's Culture Wars--Politics and Practice"  by Samia Mehrez

1は、世界的に愛読されているインド人作家の新作。この人の本は邦訳も何冊かあって、ビルマ王朝の最後の王族の末路を描く大河ドラマ『ガラスの宮殿』は、世界史の大きなうねりのなかで翻弄されながらも自分らしく生きようとする人々を印象深く描いている。エジプトに長く逗留して、シナゴーグの古文書研究をしたり、村で文化人類学的フィールドワークをしたりもしている人なので、エジプトつながりという意味でもこの人の作品は愛読しているのだ。

2は、イラクの人々の暮らしや思いを文学を通して感じてみたいという素朴な関心から。

3は、とても興味深い。カンヌの功労賞受賞などを通して世界的にも著名な故シャヒーン監督のまとまった映画批評・分析で英語で書かれたものはあまりないようなので、これを読んで、改めて彼の映画を見てみたい。

そして4~6は、グローバリゼーションと長期独裁の影響で流動化するエジプトの市民社会のうごめきを知るよすがとして、面白そうな本が新刊でまとまって出ていたので、買ってみた。扉の著書紹介をパラパラやった感じでは、どの本も基底に、「この社会、このままじゃヤバイんじゃない?」という警告が流れていると感じる。カイロで生活して、多くはないにせよエジプト人の生の声を聞いている実感としてもヤバさは伝わってくるのだけれど、専門家の分析を通して、どのくらいどんなふうにヤバいのかを勉強しておきたい。


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インドで4年生活し、今度はエジプトへ!この国の人々の生態、面白情報をお届けします。

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