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えじぷとの文化、芸術、エンターテインメント堪能記です。 twitter: @sukkarcheenee facebook: http://www.facebook.com/koji.sato2
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年末にカイロの知人からメールをもらって、1月12日にカイロ・オペラハウスでWest-Eastern Divan Orchestraの公演があることを知った。ただし、発表されたその日に開始されたイスラエルによるガザ空爆のため、公演実施は実際には危ういとも書いてあった。知人から受け取ったメールによると、West-Eastern Divan Orchestraのカイロ公演は2年前にも企画されていたのだが、このときはイスラエルのレバノン攻撃であえなく中止となった経緯があり、今回もこの公演を中止にすることが目的であったかのように、空爆が開始されたのだった。

僕自身はクラシック音痴で、最近になって、のだめブームでにわか勉強を始めた程度。頭でっかちのそしりを受けて当然ではあるが、アルゼンチン生まれのイスラエル人ダニエル・バレンボイムとレバノン生まれ、カイロ育ちのパレスチナ人故エドワード・サイードが互いの思想に共鳴して作り上げた、イスラエル人とパレスチナ人を中心とするアラブ人によるオーケストラという、その成り立ちに惹かれて、この楽団に関心をもってきたのだった。作曲家バレンボイムはもちろんのことだが、アラブを代表する知識人サイードもまた音楽を心底愛していた。音楽をともに奏でることで言葉を介さずに理解しあえることを、二人は対談をまとめた本『Parallels and Paradoxes』のなかで繰り返し称え、その一点こそが二人をこの楽団の結成へとつき動かしていったという。

ウィキペディアでWest-Eastern Divan Orchestraを引くと、そこにバレンボイムの面白いコメントが紹介されていた。

"The Divan is not a love story, and it is not a peace story. It has very flatteringly been described as a project for peace. It isn't. It's not going to bring peace, whether you play well or not so well. The Divan was conceived as a project against ignorance. A project against the fact that it is absolutely essential for people to get to know the other, to understand what the other thinks and feels, without necessarily agreeing with it. I'm not trying to convert the Arab members of the Divan to the Israeli point of view, and [I'm] not trying to convince the Israelis to the Arab point of view. But I want to - and unfortunately I am alone in this now that Edward died a few years ago - and...I'm trying to create a platform where the two sides can disagree and not resort to knives."

つまり、このオーケストラはよく平和のためのプロジェクトとして認識され紹介されることが多いが、そうではない。それは、「無視」「無知」に対抗するプロジェクトであ り、音楽を通して他者の考えや思いを理解することが目的なのだ。合意が形成されなくともよい、一方が他方に同化したりする必要もない。両者が凶器に手をか けることなく「不同意」するためのプラットフォームを作ろうというのが、この企てである。


異なる考えをもつ人々の対話=相互理解=合意形成=平和

というのが、国際交流や他者間の対話に携わる者のなかに意識的・無意識的を問わず作られたイメージだろうと思うが、ここでバレンボイムとサイードがやろうとしていることは、共通の考えを作ることではなく、違う考えのままに共存することなのだ。楽譜を解釈し、それを楽器でともに表現する行為のなかで演奏者たちはお互いを理解し、お互いが違うということを尊重し、そして決して傷つけあうことはない。百の言葉を重ねるよりも音楽を一緒に作ることが、お互いの理解を促すという確信は、アマチュアなれど、音楽をやったことのある自分にも共有できるものだ。

世界のだれもが音楽家で、いたるところに音楽があふれていたら、この血なまぐさい世の中は、少しは癒されるだろうか。このようなときだからこそ、カイロの地で、彼らの公演を見てみたかった。

今日、大使公邸での賀詞交換会にて、先の知人より、公演のキャンセルを知った。





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