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えじぷとの文化、芸術、エンターテインメント堪能記です。 twitter: @sukkarcheenee facebook: http://www.facebook.com/koji.sato2
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2009年の幕開けは、展覧会のオープニングとともにはじまった。
1994年から15年間にわたって、油絵の技法でピラミッド、スフィンクス、アブシンベル神殿など古代エジプトの遺跡を中心とするエジプトの風物を描いてきた、木下和(きのした・かず)さんの個展を、国際交流基金カイロ事務所が現地主催者となって受け入れた企画だ。

この事業は、自分が赴任する前、いまから3年以上前に基金カイロ事務所にもちこまれていた提案で、僕としては作家にも作品にも面識のない状態から引き継いだこともあり、勝手がつかめない時期が長く続いた。カイロオペラハウスのギャラリーに交渉に出かけ、元旦からの10日間でよければ無償で会場を提供いただけるということになり、いよいよ広報と作品受け入れの準備という段階になっても、僕はもちろんのこと、事務所のエジプト人スタッフにも、どういう展示になって観客がどんな反応をするのか、そもそも観客は来るのか、という疑問符がたくさん並んだ状態だった。というのも、この1年、エジプト人と接していて、彼らが古代エジプトの偉大なる栄光とどう向き合ったらいいかわからず、それをもてあましているのではないかと感じていたからだ。エジプトでの初仕事であったピラミッドでの凧揚げ大会においても、下見に出かけたうちのスタッフは、ピラミッドを見るのは小学生以来だし、ほとんどのエジプト人は古代遺跡に関心がないと言っていた。そんなエジプト人が、古代の遺跡を描いた絵画を見に来るだろうか、しかもお正月に。これが、不安の正体である。

ところが、フタをあけてみたら、連日100人から200人の観覧を記録し、20件以上のメディアが取材に訪れた。取材は個別に作家インタビューを希望してきたため、最短10分のテレビ取材から最大2時間の雑誌取材まで、僕や事務所スタッフが通訳に駆り出された。この数字は、カイロでの展覧会としては、相当にいい数字である。

しかも、特筆すべきは、リピーターが多かったこと。まず、一人一人、じっくりと鑑賞し、写真をとったりメモをとったり、作家に質問したり、実に熱心だった。そして熱心が高じた数名は、翌日家族を連れてやってきて、後日、友人を連れてまたやってきたりした。メディアの広報効果もすごかったが、口コミの力も大きかったのは、まだコミュニティが生きているカイロらしさが現れた結果といえる。

元旦のオープニングに果たして人が集まってくれるか、最後の瞬間まで気をもんでいた事務所の広報担当スタッフも、200人近い人だかりに驚きと安堵の表情を浮かべていた。後日、彼女がこの現象を分析したところによると、エジプトはいま落ちるところまで落ちていて、みな自信をなくしている。今回のガザ攻撃をめぐってエジプトがアラブ中から非難されているのを見ても、外からも評価や感謝の声が聞かれない。これはアラブ民族主義を唱え、第三世界の盟主の名をほしいままにしたナセルの時代からすると、いかにも対照的な事態だ。そんなとき、日本のアーティストが、エジプトのことをよく評価してくれたことが、彼らの誇りを刺激したのではないか、と。王朝の断絶や紛争があったとしても、厳然とそこにあり続ける古代遺跡、太古から変わらずナイルを照らしてきた月・日は不変であり、それを大切にし後世へ伝えていくことが、現在を生きるわれわれの責務である。この木下さんの普遍的なメッセージが、年初に新たな気持ちでギャラリーを訪ねたカイロ市民に通じたということだろうか。先日紹介したバレンボイムのコメントではないが、言葉を超えた芸術の訴求力を実感した瞬間だった。
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インドで4年生活し、今度はエジプトへ!この国の人々の生態、面白情報をお届けします。

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