えじぷとの文化、芸術、エンターテインメント堪能記です。
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1月25日、13:45。15:55発ウィーン行きの飛行機に乗ってもらうためには、ずいぶん遅れて市内を出てしまった一抹の不安をかき消すように、僕と田村氏は車中でコシャリをかきこんだ。
前日のカイロ・シンフォニー・オーケストラとの共演は、田村氏の気合と熱情のこもった演奏に引っ張られるように、シンフォニーの演奏も熱気を帯び、「いつもと違う」と感激した観客のスタンディング・オベーションで会場は沸いた。このあとに二曲の演目が残っているにも関わらず、アンコールの声がこだまし、田村氏がショパンの「子犬のワルツ」の高速プレイでさらに観客を沸かせた。演奏が終わって楽屋に戻ってきた彼曰く、いざイスに腰掛けペダルに足をかけると、なんと、ペダルがあたる床の部分にちょうど穴が開いていて、いつもの角度で踏むことが出きず、ずいぶん苦労したとのこと。そんなことを微塵も感じさせない、感動的な演奏だった。
弱冠20歳にして、ロンディボー国際音楽コンクールで1位になったピアニスト田村響さんは、現在22歳。まだあどけなさの残る顔立ちがその圧倒的若さを物語るが、接してみてすぐに、こちら側はその考えを改めなければならないと痛感させられる。小さい頃から大人とつきあってきたということ、そして音楽を通して多くの人と出会い、世界を見、さまざまなことを学び吸収してきたことが、22歳にここまで成熟した思考と感性を育てたのだろうか。昨年7月のカイロでのソロ公演、そして今回のシンフォニーとの共演の両方を通して、ずいぶん長い時間、今をときめく名ピアニストと一緒の時間をすごすことができた。その事実だけでも光栄なことだが、音楽のこと、人生のこと、世の中のことを話しながら、彼の生き方、ものの考え方に共感し、多くのことを学んだことが最大の財産と思う。
公演前のメディアのインタビューで、今後の夢を問われた田村氏は、それは3つあると前置きしたうえで、
1.家庭をもつこと
2.世界中を旅すること
3.世界中でピアノを演奏すること
とした。なにかピアノや音楽にまつわる話が出るかと思ったら、この順番で語られたことに、記者も僕も驚く。音楽は大事だが人生の一部。人生を謳歌し、人として日々成長していくことが、音楽にとっての肥やしになると言う。西洋古典音楽の世界では僻地といっても間違いではないカイロに二度も来てくれたことにも、一期一会的な彼の思考が背景にあったことがわかる。相手が上手いかそうでないかは一番大事なことではない。相手を理解しあいながら、一つの音楽を作っていくプロセスこそが大事である。そして、新しい土地、新しい人との出会いから得られるエネルギーを糧に人間としての自分に磨きをかけていく。
同じ記者から、ガザでの戦争について感想をきかれたときも、「戦争は悲惨だ、多くの人が傷つくのは悲しいと言うだけなら簡単。クラシックの戦争をテーマにした名曲が感動を与えるのは、作曲家が実際の戦争自分の内側から身をもって体験したからこそ。その意味では、自分も戦争というものをこの目で見て感じる必要があるかもしれない。でも、死にたくはないですけどね。」と、最後に茶目っ気を残しつつ、やはり人生経験を通じて人間として大きくなることの重要性を述べられた。
公演後の打ち上げにて、アナリーゼをどの程度やるのか聞いたときも、やはり同様の考え方が基礎にあると思わせる答えが返ってきた。本を読んで言葉で理解する前に、楽曲を鑑賞して共感するための自分のキャパシティを成長させなければ頭でっかちになってしまうと、いたずらに字面だけ追ってわかった気になることに対する戒めを語っていた。
リハーサルの場面でも、指揮者や共演者に言葉でいろいろ注文をつけるのかと思いきや、言葉で言ってしまうことを極力控え、自分の演奏でもって自分がやろうとしていることを伝えたい、と言う。言語化するよりも前に、本質を理解することが大切であるとの哲学が、あらゆる場面で彼の態度、反応に現れていた。
いかに美辞麗句を述べる天才でも、自分がしゃべっていることを心の深いところで自分のものに出来ていない人は、いずれ自分の言葉を簡単に裏切ってしまうものかもしれない。自分のなかで思考や感情が熟成することを大事にしていれば、本質はいずれついてくる。それが、田村響さんから僕が学んだとても大切なことだと思っている。
車は渋滞に巻き込まれ、空港に到着したのは14:45。あと10分でカウンターが閉まるというタイミングだった。
公演に次ぐ公演の多忙なスケジュールは、本拠ザルツブルグに戻った翌日から、また休みなく続くそうだ。いずれ間違いなく大物になるであろうそんな風格を漂わせる、それでいて陽気で気さくな愛されるキャラクターの持ち主。田村響の今後の活躍のその行く先は未知数で、計り知れない。
前日のカイロ・シンフォニー・オーケストラとの共演は、田村氏の気合と熱情のこもった演奏に引っ張られるように、シンフォニーの演奏も熱気を帯び、「いつもと違う」と感激した観客のスタンディング・オベーションで会場は沸いた。このあとに二曲の演目が残っているにも関わらず、アンコールの声がこだまし、田村氏がショパンの「子犬のワルツ」の高速プレイでさらに観客を沸かせた。演奏が終わって楽屋に戻ってきた彼曰く、いざイスに腰掛けペダルに足をかけると、なんと、ペダルがあたる床の部分にちょうど穴が開いていて、いつもの角度で踏むことが出きず、ずいぶん苦労したとのこと。そんなことを微塵も感じさせない、感動的な演奏だった。
弱冠20歳にして、ロンディボー国際音楽コンクールで1位になったピアニスト田村響さんは、現在22歳。まだあどけなさの残る顔立ちがその圧倒的若さを物語るが、接してみてすぐに、こちら側はその考えを改めなければならないと痛感させられる。小さい頃から大人とつきあってきたということ、そして音楽を通して多くの人と出会い、世界を見、さまざまなことを学び吸収してきたことが、22歳にここまで成熟した思考と感性を育てたのだろうか。昨年7月のカイロでのソロ公演、そして今回のシンフォニーとの共演の両方を通して、ずいぶん長い時間、今をときめく名ピアニストと一緒の時間をすごすことができた。その事実だけでも光栄なことだが、音楽のこと、人生のこと、世の中のことを話しながら、彼の生き方、ものの考え方に共感し、多くのことを学んだことが最大の財産と思う。
公演前のメディアのインタビューで、今後の夢を問われた田村氏は、それは3つあると前置きしたうえで、
1.家庭をもつこと
2.世界中を旅すること
3.世界中でピアノを演奏すること
とした。なにかピアノや音楽にまつわる話が出るかと思ったら、この順番で語られたことに、記者も僕も驚く。音楽は大事だが人生の一部。人生を謳歌し、人として日々成長していくことが、音楽にとっての肥やしになると言う。西洋古典音楽の世界では僻地といっても間違いではないカイロに二度も来てくれたことにも、一期一会的な彼の思考が背景にあったことがわかる。相手が上手いかそうでないかは一番大事なことではない。相手を理解しあいながら、一つの音楽を作っていくプロセスこそが大事である。そして、新しい土地、新しい人との出会いから得られるエネルギーを糧に人間としての自分に磨きをかけていく。
同じ記者から、ガザでの戦争について感想をきかれたときも、「戦争は悲惨だ、多くの人が傷つくのは悲しいと言うだけなら簡単。クラシックの戦争をテーマにした名曲が感動を与えるのは、作曲家が実際の戦争自分の内側から身をもって体験したからこそ。その意味では、自分も戦争というものをこの目で見て感じる必要があるかもしれない。でも、死にたくはないですけどね。」と、最後に茶目っ気を残しつつ、やはり人生経験を通じて人間として大きくなることの重要性を述べられた。
公演後の打ち上げにて、アナリーゼをどの程度やるのか聞いたときも、やはり同様の考え方が基礎にあると思わせる答えが返ってきた。本を読んで言葉で理解する前に、楽曲を鑑賞して共感するための自分のキャパシティを成長させなければ頭でっかちになってしまうと、いたずらに字面だけ追ってわかった気になることに対する戒めを語っていた。
リハーサルの場面でも、指揮者や共演者に言葉でいろいろ注文をつけるのかと思いきや、言葉で言ってしまうことを極力控え、自分の演奏でもって自分がやろうとしていることを伝えたい、と言う。言語化するよりも前に、本質を理解することが大切であるとの哲学が、あらゆる場面で彼の態度、反応に現れていた。
いかに美辞麗句を述べる天才でも、自分がしゃべっていることを心の深いところで自分のものに出来ていない人は、いずれ自分の言葉を簡単に裏切ってしまうものかもしれない。自分のなかで思考や感情が熟成することを大事にしていれば、本質はいずれついてくる。それが、田村響さんから僕が学んだとても大切なことだと思っている。
車は渋滞に巻き込まれ、空港に到着したのは14:45。あと10分でカウンターが閉まるというタイミングだった。
公演に次ぐ公演の多忙なスケジュールは、本拠ザルツブルグに戻った翌日から、また休みなく続くそうだ。いずれ間違いなく大物になるであろうそんな風格を漂わせる、それでいて陽気で気さくな愛されるキャラクターの持ち主。田村響の今後の活躍のその行く先は未知数で、計り知れない。
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