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えじぷとの文化、芸術、エンターテインメント堪能記です。 twitter: @sukkarcheenee facebook: http://www.facebook.com/koji.sato2
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ジャーナリストではない僕としては、仕事でもないのに大使館や家族からの勧告に逆らってタハリール広場に行く理由をひねり出すこともできず、この日々ドラマチックに展開していく革命を、基本的には日本にいるみなさんと同じように家のテレビで眺めるしかなかった。

それでも、必要から外出した折々に現在進行形の革命の断片を目撃して、わずかばかりにしても歴史が音をたてて転換する同じグラウンドに立っている実感をもてたときに抱いた感情は、やはり「嬉しい」というものに近かったように思う。

【第1日:1月25日(火)】
この日は、去年から突然、「警察の日」として祝日に指定された。いまでは世界中のみんなが知っている悪名高きエジプトの警察。そんな輩を慰労するなんてちゃんちゃらおかしい、というムードが街中に充満していた。宗教的な祝日以外は日本の祝日を採用しているうちのオフィスは通常営業。デモの噂を聞いてはいたが、どうせ2008年4月6日のゼネストのように、事前に権力に封じ込まれて、何もできないだろうとあきらめて、もくもくと事務仕事にいそしむ。タハリール広場からものの200mくらいしか離れていないオフィスではあるが、僕の席からは外の騒擾はほとんど聞こえてこなかった。

午後3時頃だったか、ふとどうなっているか気になって、スタッフに声をかけて、図書館からタハリールへまっすぐ伸びるKasr El Aini通りを眺めたら、目の前でデモ隊と警察部隊が石を投げ合っている。デモ隊の何人からは通りに面する上院議会に乗り込もうとするが、ゲートの向こう側から警官が青年たちを水攻めにする。
じーっと眺めているうちに変なことに気がつく。デモ隊の輪に入って、警察部隊と対峙していた何人かの男が、突然向きを変えて、若者をボコボコに殴る。制服の警官がジョインして、さらに殴る、蹴る。意識がなくなるくらい、執拗な暴力を加える。そうか、ムバラク時代を通して、いやきっとそれ以前から、この国の警察組織はこうやって、私服で市民社会のなかにまぎれながら、突然牙をむいて襲うという残虐性で恐れられてきたのか。そうやって何人か見せしめのように暴力を加えられた若者たちが、車に連れ込まれ、どこかの留置場へと運ばれていった。

数では圧倒的に勝るデモ隊は、それでも優勢に警察を追い込むが、とうとう警察部隊は催涙弾を使用。この先毎日毎日、何万発も若者に向けて発射された、白い煙を上げ毒をまきちらす、あの殺傷兵器だ。一旦は逃げるが、また前進する若者たちの勇気に感動する。

そうやって呆然と事態の推移を眺めていたわれわれスタッフ一同、いつもより数段高い規模と緊張感のデモになってきたことに驚き、はて、こんな衝突の真っ只中にいるわたしたちはここから安全に脱出できるのか、という不安にかられはじめる。ドライバーたちが何度か下に降りて様子をみるが、Kasr El Ainiもナイル川沿いのCornicheも、どちらも衝突でふさがれていて、すぐには出られそうもない。「夜は危ないから今すぐなんとかして出たほうがいい。」という意見と「夜になればデモの継続は難しいからもう少し待つべきだ」という意見がまっぷたつに割れ、その場の責任者の役割から逃れられない僕の結論をみんなが注視する。こんなこと経験したことなんだから、まともな判断なんかできるもんか!内心ではやぶれかぶれになりながらも、どちらかといえば日の高いうちに出たほうがいいと言い、またドライバーが下に降りてタイミングを見計らう。公用車2台と僕の私用車1台に分乗して、市内の西と北と南へと脱出し、午後6時過ぎにはみな無事家に戻ることができた。

このデモはきっと長期化するだろうと、みなが思った。そして、タハリール広場と目と鼻の先という好立地のわれらがオフィスに通い続けるのは、あまりに危険だ。僕は、みなに連絡して次の日を自宅待機とした。そのときは、こんな待機状態が3週間も続くとは思っていなかったけれど。

写真をとっておけばよかったと今になって思うが、このとき自分はシャッターを切る気になれなかった。ジャーナリストにはなれそうもない。
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インドで4年生活し、今度はエジプトへ!この国の人々の生態、面白情報をお届けします。

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