えじぷとの文化、芸術、エンターテインメント堪能記です。
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カイロに来て1年10ヶ月。いつか行ってみたいと思っていたイスラエル・パレスチナに行ってきた。
といっても、私的旅行というわけにはいかない。公用旅券をもって仕事でエジプトに来ている身としては、このパスポートにイスラエルの出入国スタンプが押されたが最後、エジプト・ヨルダン・トルコを除く中東の国で受け入れてもらえなくなってしまう。
なので、正式にイスラエルにある日本大使館に出張を受け入れてもらい、しかも、別途、イスラエル入国のための公用旅券を発行してもらって、出かけた。
使用した飛行機は、EL AL ISRAEL(略してエルアル)という、イスラエルの航空会社。カイロから行ったことのある経験者から聞いたところ、カイロ空港はセキュリティチェックが厳しいから、3時間前には確実に空港に着いていたほうが良いとのこと。忠告に従って早めに出かけたら、確かに、イスラエル行きの乗客専用のチェックインゲートがあって、そこだけで5人くらいの警官がスタンバイしていた。ゲートに荷物を通したら、今度は、ロープを張った4つのチェックインカウンターエリアのなかに、5人くらいのイスラエル人係官がいて、譜面台をおいた4つの島で、一人ずつ、面接(尋問?)を行っている。それが済んだ人は、ION SEARCHとかいうブランド名のついた巨大な荷物検査機で厳重な荷物チェックを受ける。そのあとでようやく、チェックインして搭乗券を受け取ったら、カウンターの脇でエジプト人係官の出国スタンプをもらうことになる。
僕の番になった。
係りの女性が、僕の旅券を手にして、珍しいのが来たという感じで笑いながら、他の4人のスタッフに向かって「オフィーシャル!!」と叫ぶ。僕も、「お手柔らかに」というメッセージを笑顔に託して投げかけた。
係官:イスラエルはどこに行きますか?
僕:大使館と、ヘブライ大学などの学術・文化機関です。
係官:公用ですが、あなたの組織とポジションは?
僕:Japan Foundationのカイロ事務所の次席で、外国との文化交流をやっています。今回の出張もその仕事としてイスラエルの学術・文化関係者と面会します。
係官:あたの荷物を最後にパックしたのは誰ですか?
僕:私です。
係官:その後、誰も荷物に触っていませんか?
僕:触っていません。
係官:ところで、あなたのパスポートには、シリアに行った記録がありますが、これはお仕事ですか?
僕:・・・・・・!!
ま、間違えた。出そうと思って用意していたパスポートは、イスラエル行きのために作った専用パスポートなのに、よりによって、あわてて出してしまったのは、もともともっているほうで、しかも、そこにはイスラエルの敵国、シリアの入国記録があるときた!あー、しまった。
僕:えー、観光ですよ、ハハハ。そうそう、間違えました。本当は、こっちのパスポートを出すべきでした、ヘヘヘ。
係官:まあ、あなたの場合どちらもオフィシャルですから、シリアに行かれたからといって、オリジナルに問題ありというわけではありませんから。
僕:あー、そうですか。ありがとう。
係官:では、あなたについては、荷物検査は不要なので、チェックインカウンターへどうぞ!
ふー、危ない、危ない。こういうときほど、頭のなかでシミュレートしたとおりにやれないんだよね。。。
チェックインを簡単に済ませ、最後の出国手続き。ここでは、イスラエル専用パスポートを自信をもって、差し出した。
係官は、パラパラと真っ白なページをめくりながら、こう言った。
「もうひとつのパスポートを見せて。」
な、なんだよ、こっちに出国スタンプ、押してくれないのかよ??
「もうひとつのって?」
「だから、エジプトのビザがついてるやつだよ。」
「あー、これのこと、ね。ハイ。でも、イスラエル入国だけじゃなくって、エジプト出国も、こっちの白いほうに押してほしいな。」
係官は、もう一人の係官としばらくヒソヒソ話をしていたが、おもむろにスタンプをふりあげ、「もうひとつの」パスポートのほうにバーンとハンコを押してくれた。
「・・・・」
「イスラエルの入国は、そっちの白いほうを出せば大丈夫さ。」
これでいいような気がしつつ、なんだか納得のいかない、幸先のいまいちよくない出国だった。
搭乗ゲート7番付近のカフェには、イスラエル人らしき人々に混じって、ラテン系の陽気な人々がスペイン語で騒いでいた。何の用事で、エジプトとイスラエルを回るのか?キリスト教徒として、聖家族の歩んで道のりをたどるという、神聖なる旅路を歩んでいるのか?それにしては、神妙さのない陽気な騒ぎぶり。これがラテンの力か。
飛行機は1時間ちょっとでテルアビブに着いた。空港は超近代的で、さっそく玄関からしてこの国の経済的・軍事的パワーを思い知らされる。さー、入国だ。今度も「もうひとつのほうに押されたら、これまでの準備が水の泡。始末書もんだ・・・」とおどおどしながら、トイレで緊張をほぐしてから、入国審査へ。スーツのポケットからとりだしたのが、真っ白なほうのパスポートであることを確かめ、やさしそうな雰囲気のお姉さんが座っているカウンターの前に並んだ。
自然体を心がけて白いパスポートを差し出すと、お姉さんは、3秒でスタンプを押してくれた。これで、始末書は書かずにすみそうだ。
空港を出て左に向かうと、オフィシャルなタクシースタンドがある。係りの女性に案内され、きれいなメルセデスのタクシーに乗り込む。夜の市内へのハイウェーは、カイロとは違って、渋滞することなく、常に120~140キロでぶっとばして、20分でホテルに着いてしまった。
ホテルが近づいてきた頃、運転手さんの携帯がなった。なぜか、彼は携帯を車内のスピーカーシステムにつないでいて、大音量で中年女性の不機嫌な声が鳴り響く。そこではじめて、彼がロシア系であることがわかる。ロシア語の夫婦喧嘩を堪能させてもらったお礼に、下車するときに、「ダズビダーニヤ」と声をかけてみた。さすがに、僕の発音を聞いて、喧嘩の内容を全部知られたとは思わなかったかもしれないが、運転手さんは窓をあけて、名刺を差し出し、「帰りも使ってくれ。」とつぶやいた。
こうして、終わってみればなんということもなく、僕はイスラエルへの入国を果たしたのだった。(つづく)
といっても、私的旅行というわけにはいかない。公用旅券をもって仕事でエジプトに来ている身としては、このパスポートにイスラエルの出入国スタンプが押されたが最後、エジプト・ヨルダン・トルコを除く中東の国で受け入れてもらえなくなってしまう。
なので、正式にイスラエルにある日本大使館に出張を受け入れてもらい、しかも、別途、イスラエル入国のための公用旅券を発行してもらって、出かけた。
使用した飛行機は、EL AL ISRAEL(略してエルアル)という、イスラエルの航空会社。カイロから行ったことのある経験者から聞いたところ、カイロ空港はセキュリティチェックが厳しいから、3時間前には確実に空港に着いていたほうが良いとのこと。忠告に従って早めに出かけたら、確かに、イスラエル行きの乗客専用のチェックインゲートがあって、そこだけで5人くらいの警官がスタンバイしていた。ゲートに荷物を通したら、今度は、ロープを張った4つのチェックインカウンターエリアのなかに、5人くらいのイスラエル人係官がいて、譜面台をおいた4つの島で、一人ずつ、面接(尋問?)を行っている。それが済んだ人は、ION SEARCHとかいうブランド名のついた巨大な荷物検査機で厳重な荷物チェックを受ける。そのあとでようやく、チェックインして搭乗券を受け取ったら、カウンターの脇でエジプト人係官の出国スタンプをもらうことになる。
僕の番になった。
係りの女性が、僕の旅券を手にして、珍しいのが来たという感じで笑いながら、他の4人のスタッフに向かって「オフィーシャル!!」と叫ぶ。僕も、「お手柔らかに」というメッセージを笑顔に託して投げかけた。
係官:イスラエルはどこに行きますか?
僕:大使館と、ヘブライ大学などの学術・文化機関です。
係官:公用ですが、あなたの組織とポジションは?
僕:Japan Foundationのカイロ事務所の次席で、外国との文化交流をやっています。今回の出張もその仕事としてイスラエルの学術・文化関係者と面会します。
係官:あたの荷物を最後にパックしたのは誰ですか?
僕:私です。
係官:その後、誰も荷物に触っていませんか?
僕:触っていません。
係官:ところで、あなたのパスポートには、シリアに行った記録がありますが、これはお仕事ですか?
僕:・・・・・・!!
ま、間違えた。出そうと思って用意していたパスポートは、イスラエル行きのために作った専用パスポートなのに、よりによって、あわてて出してしまったのは、もともともっているほうで、しかも、そこにはイスラエルの敵国、シリアの入国記録があるときた!あー、しまった。
僕:えー、観光ですよ、ハハハ。そうそう、間違えました。本当は、こっちのパスポートを出すべきでした、ヘヘヘ。
係官:まあ、あなたの場合どちらもオフィシャルですから、シリアに行かれたからといって、オリジナルに問題ありというわけではありませんから。
僕:あー、そうですか。ありがとう。
係官:では、あなたについては、荷物検査は不要なので、チェックインカウンターへどうぞ!
ふー、危ない、危ない。こういうときほど、頭のなかでシミュレートしたとおりにやれないんだよね。。。
チェックインを簡単に済ませ、最後の出国手続き。ここでは、イスラエル専用パスポートを自信をもって、差し出した。
係官は、パラパラと真っ白なページをめくりながら、こう言った。
「もうひとつのパスポートを見せて。」
な、なんだよ、こっちに出国スタンプ、押してくれないのかよ??
「もうひとつのって?」
「だから、エジプトのビザがついてるやつだよ。」
「あー、これのこと、ね。ハイ。でも、イスラエル入国だけじゃなくって、エジプト出国も、こっちの白いほうに押してほしいな。」
係官は、もう一人の係官としばらくヒソヒソ話をしていたが、おもむろにスタンプをふりあげ、「もうひとつの」パスポートのほうにバーンとハンコを押してくれた。
「・・・・」
「イスラエルの入国は、そっちの白いほうを出せば大丈夫さ。」
これでいいような気がしつつ、なんだか納得のいかない、幸先のいまいちよくない出国だった。
搭乗ゲート7番付近のカフェには、イスラエル人らしき人々に混じって、ラテン系の陽気な人々がスペイン語で騒いでいた。何の用事で、エジプトとイスラエルを回るのか?キリスト教徒として、聖家族の歩んで道のりをたどるという、神聖なる旅路を歩んでいるのか?それにしては、神妙さのない陽気な騒ぎぶり。これがラテンの力か。
飛行機は1時間ちょっとでテルアビブに着いた。空港は超近代的で、さっそく玄関からしてこの国の経済的・軍事的パワーを思い知らされる。さー、入国だ。今度も「もうひとつのほうに押されたら、これまでの準備が水の泡。始末書もんだ・・・」とおどおどしながら、トイレで緊張をほぐしてから、入国審査へ。スーツのポケットからとりだしたのが、真っ白なほうのパスポートであることを確かめ、やさしそうな雰囲気のお姉さんが座っているカウンターの前に並んだ。
自然体を心がけて白いパスポートを差し出すと、お姉さんは、3秒でスタンプを押してくれた。これで、始末書は書かずにすみそうだ。
空港を出て左に向かうと、オフィシャルなタクシースタンドがある。係りの女性に案内され、きれいなメルセデスのタクシーに乗り込む。夜の市内へのハイウェーは、カイロとは違って、渋滞することなく、常に120~140キロでぶっとばして、20分でホテルに着いてしまった。
ホテルが近づいてきた頃、運転手さんの携帯がなった。なぜか、彼は携帯を車内のスピーカーシステムにつないでいて、大音量で中年女性の不機嫌な声が鳴り響く。そこではじめて、彼がロシア系であることがわかる。ロシア語の夫婦喧嘩を堪能させてもらったお礼に、下車するときに、「ダズビダーニヤ」と声をかけてみた。さすがに、僕の発音を聞いて、喧嘩の内容を全部知られたとは思わなかったかもしれないが、運転手さんは窓をあけて、名刺を差し出し、「帰りも使ってくれ。」とつぶやいた。
こうして、終わってみればなんということもなく、僕はイスラエルへの入国を果たしたのだった。(つづく)
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