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えじぷとの文化、芸術、エンターテインメント堪能記です。 twitter: @sukkarcheenee facebook: http://www.facebook.com/koji.sato2
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エジプトの治安が安定してくれないので、日本から人を招いた仕事はまだ当面は難しそうだ。

だからといってヒマにしておれんと思っていたところに、去年11月にアレキサンドリアで津島佑子さんの『光の領分』を芝居にした演出家がカイロでも公演をやりたいと言ってきたので、せっかくだからと原作の翻訳者に登壇いただいて、公演後に演出家・脚本家・翻訳者の三者対談を組んでみた。エジプトの若きクリエーターたちは、原作の日本的な風景や事象を伝えることには関心がなく、むしろ夫に離縁を迫られる女と娘の社会とのかかわりの難しさという普遍的テーマに反応したようだ。だから、観客のなかで日本というより演劇自体に関心がある人たちは純粋に、作品の国籍を意識せず楽しんでくれたようだが、日本に関心をもってきてくれた人にとっては、日本を表象するものが見つけられなかったことがものたりなかった様子で、質問やコメントでは、しきりに主催者の僕に対して、もっと日本文化を紹介してほしいと激烈アピール。襟をただして臨みたいと思う一方で、こういう議論の場では、作品そのもの、そして作品の翻案・アダプテーションという問題にフォーカスした議論が少なかったことが残念だ。

女性のモノローグに仕立てた30分の芝居は、スピーディーで、ダイナミックで、原作のスローで内省的な世界とはずいぶん違う雰囲気だったけれど、言葉があまりフォローできなくとも、面白さが伝わってきた。うちのエジプト人スタッフなど、そこまでかと思うほど感心しきりで、日本文学の戯曲化という今回の方法を大いに気に入り、どんどんやろうと盛り上がっている。巷はデモだ宗教暴動だパレスチナ連帯だと大騒ぎだが、こんな形で久しぶりに日本文化を種にしてエジプト社会に一石を投じることができて、ほのかな充足感がまだ持続しているところだ。

詳細は、公式ブログ記事をご覧ください。


世の中はいっこうに落ち着きを見せず。7日のImbaba教会焼き討ち事件は、エジプトの先住民たるマイノリティ、コプト教徒の間で大きな衝撃を与えたようで、宗教間の法的な平等を求めたタハリールや国営テレビ局でのデモが、いまも続いている。5月13日の金曜デモは、イスラエル建国記念=パレスチナにとっての破局(ナクバ)記念日の5月15日に向け、パレスチナへの連帯を示すという性格の強いものとなり、本来中心テーマであるはずのムスリム・コプトの連帯は、なぜか脇へおいやられ、しかも、翌14日にはまたもやならず者(バルタギ)がテレビ局前のデモを襲撃し、死傷者が出る衝突になってしまった。国民一丸となった民主主義の遂行という革命精神を守ろうとする人々が、コプトもムスリムも一体となって、遅々として進まない3月のSorの教会焼き討ちの真相究明と、今後の宗教間の法的平等実現を求めて、勇敢にストリートで抗議を続けている。Sharaf暫定政権もImbaba事件の調査委員会を発足させ、アズハルのタイイブとコプト教会のシュノーダが和解を求める声明を出すなど、表の政治世界でも一定の努力は見られるが、一旦出来てしまった不信の亀裂は、特に劣勢にたつマイノリティ、コプトの人たちにとって修復しがたいレベルに達しているように見える。

報道は事件のみをクローズアップするため、どうしても遠目には、国民レベルでクラッシュと不和が生じているように見えてしまうが、もちろんこれは、ごく一握りのグループが引き起こしている事件で、しかも純粋に信条をめぐる対立といいきれない要素を含んでいる。大多数の国民は、宗教・宗派の違いを越えて普通に社会生活をおくっている。僕の職場にも、ムスリムもコプトもいるけれど、違いの信条に対しての嫌悪感、違和感のようなものは一切もっていない。一連の事件に、旧与党NDP勢力が関与していることは、デモを襲ったならず者がNDPのIDをもっていたことからも明白(http://www.youtube.com/watch?v=NwdoE8xQmas&feature=share)。なんとかして社会的な不安を煽って、革命前の状態への復元を一人でも多くの人が望むように方向づけたいのだろう。

ただ、事件に関与していると思われるもう一つの勢力、Salafistsとなると、話は別かもしれない。このイスラム原理主義集団については、メディアも実態を把握できていないようで、表ではムスリム同胞団らとともに宗派間連帯を説いてまわっているものの、裏では旧勢力とつながりながら、勢力を拡大させようとしているのだろうか。Al Ahram Weeklyの最新号では、1ページにわたって彼らが何者であるかを紹介している。70年代からあらわれた復古主義者たちで、大きくは1.イデオロギー型と2.組織型に分かれ、1は、1-①Scholastic Salafis(神学サラフィー、70年代にアレキサンドリアから勃興)、1-②Activist Salafis(行動型サラフィー、カイロのシュブラ地区から70年代に誕生)、1-③ジハーディスト(アルカイダも含まれる)に、2は2-①Ansar Al-Sunna Al-Mohammediya Society(預言者ムハンマドの言行支持者集団)、2-②Al Gamiya Al Sharia(シャリーア集団)、2-③ワッハービズム にさらに分類されるという。僕の拙い理解では2-③=サラフィーで、もっぱらサウジへ出稼ぎに出てそこでワッハービズムの影響を受けた人たちが湾岸戦争のせいで本国に帰還したことからエジプト社会のサウジ化が進んだというものだったが、それがもっと大きな拡がりをもつものだということだけは、この記事から理解できた。そして、ときの政権は、ムスリム同胞団の伸張をおさえるためのカウンターとしてサラフィーたちを担ぎ出したり(70~80年代)、ひっこめたりしてきたが、現在は、新たなindependentsと呼ばれる勢力が、ムバラク政権から与えられた専門衛星テレビチャンネルを利用して、市民の生活レベルの疑問にイスラム原理の解釈でもって応えることにより、絶大な支持を集めている。その代表的なイデオローグがSheikh Mohamed Hassanで、ムスリム市民の絶大な支持を得て、今回の宗派対立においても、アズハルや軍最高評議会から調停役を求められたりしているようだ。

1月25日革命に対する同氏のコメントを聞くと、決して超保守ではなく、イスラームに遵法する形で社会変革すべしと、革命を肯定している(
http://www.youtube.com/watch?v=ZFfcexRsgCw)。とすると、サラフィーというのは、異宗教に対して絶対非寛容で暴力肯定型の集団から、穏健でイスラムによる平和のなかで異宗教の存在を許容する集団まで、相当に幅のある人たちのことで、では、一連の衝突に直接に関与しているのはどのグループで、それに対して穏健派はどう反応しているのか、もっと仔細に見ていく必要がありそうだ。

片や旧勢力の審判をめぐっては、スーザン・ムバラク夫人が、エジプトの2つの口座に保有していた公金とみられる400万ドル相当額のエジプト・ポンドを返還することを条件に釈放され、ムバラク前大統領本人も同様に、私物化していた公金を返還することを見返りに、恩赦を求めていると報じられている。ムバラク一族の逮捕は、やはり革命勢力に対する目くらましで、一瞬喜ばせておいて、その実、厳しい処罰の飛び火を嫌う湾岸の王族らの要求を呑んで、こっそりと釈放・減刑していくという算段だったということだろうか。復興のために湾岸のオイルマネーをどうしても必要とする軍と暫定政権が、さまざまな裏取引のすえに、国民がなかなかに納得しえない幕引きを用意しているのかもしれない。

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インドで4年生活し、今度はエジプトへ!この国の人々の生態、面白情報をお届けします。

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