えじぷとの文化、芸術、エンターテインメント堪能記です。
twitter: @sukkarcheenee
facebook: http://www.facebook.com/koji.sato2
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
カイロ・アメリカン大学の本屋さんの雑誌コーナーにBANIPALという文芸誌が置いてある。英国を拠点にアラブ文学を英語リーダーに紹介する雑誌を年3回、1998年から発行し続けている。
最新号の第34号を購入。パラパラとページをめくってみた。
そのときによっては、特定の作家や国の特集に多くのページが割かれたりもするが、今回の号にははっきりした焦点はなく、サウジアラビアの作家4名、イラクの作家3名を、近作の抜粋英訳でもって紹介しているのが目立った塊としてあるくらい。
巻頭は、スーダンの国民的作家で今年2月に亡くなったばかりのTayeb Salih氏の追悼。著名な英文への翻訳家Denys Johnson-Daviesとスーダン人作家のLeila Aboulelaが追悼文を寄稿している。
僕はといえば、まったくこの作家のことを知らなかったのだが、追悼文で目にとまったのは、Tayeb Salih氏が1966年に発表した小説"Season of Migration to the North"は、Penguin Classic Seriesに入っている唯一のアラブ小説だという事実。少ないだろうとは想像するが、まさかこの1冊だけとは!それこそ、BANIPALのような世界にアラブ文学を知らしめる継続的努力が必要な所以だろう。
この作品がレバノンの文芸誌Hiwarに発表され、徐々に本国スーダンにも漏れ入ってきたとき、あまりに自由で開放的な性表現が国内で騒動となったと言う。それとあわせてLeila Aboulelaさんが、ハルツーム大学の寮で、数部しかないコピーを奪い合って、夜中の1時から3時までに限定された"読書可能時間"に一章ずつむさぼり読んだ、というエピソードを書いているのが印象的だ。活字への渇望。自分たちのは何者であるかを問う文章への渇望。小説や本というものが日本のように溢れ返っていないことにたいして、むしろ嫉妬すら覚える話ではないか。
そのほかの記事で、さっそく読んでみたのが、今年のアラブ・ブッカー受賞作、Youssef Zeiden著"Azazeel"の抜粋英訳。5世紀、ネストリウスが異端として破門され教会の再編が行われた時期の一コプト修道士の苦悩を描いた本作は、本国エジプトでは、キリスト教への冒涜だとしてコプト教会が抗議を続けているといった曰くつきの作品。だが、Abdo Wazen氏による解説は、異教徒が他宗教を批判的に書いてはいけないという狭い了見ではなく、どの宗教にまつわる歴史事象であっても、エジプト人である限り誰でも共有財産としてそれについて語って良いとする、おおらかな姿勢でいたいものだと、この政治的論争に冷や水を浴びせている。
なお、小説の素人が他の大家たちをさしおいて受賞したことに対する侃々諤々にいたっては笑止で、Abdo氏は、この賞が作家ではなく作品に対して与えられるものであり、受賞如何が作家の優劣を即座に決めるものではないと、論争をいさめている。この手の嫉妬はどの世界でもある。受賞作品は英訳出版権を与えられ、著者ともどもアラブ世界を超えて有名になるのだから、名誉心の少しでもある人なら、妬みうらやんで当然のこと。
僕ら読者は、もう少し寝て待っていれば、優秀で熱意のある翻訳者と出版社が英訳本を届けてくれるのだから、それを楽しみに待っていよう。
最新号の第34号を購入。パラパラとページをめくってみた。
そのときによっては、特定の作家や国の特集に多くのページが割かれたりもするが、今回の号にははっきりした焦点はなく、サウジアラビアの作家4名、イラクの作家3名を、近作の抜粋英訳でもって紹介しているのが目立った塊としてあるくらい。
巻頭は、スーダンの国民的作家で今年2月に亡くなったばかりのTayeb Salih氏の追悼。著名な英文への翻訳家Denys Johnson-Daviesとスーダン人作家のLeila Aboulelaが追悼文を寄稿している。
僕はといえば、まったくこの作家のことを知らなかったのだが、追悼文で目にとまったのは、Tayeb Salih氏が1966年に発表した小説"Season of Migration to the North"は、Penguin Classic Seriesに入っている唯一のアラブ小説だという事実。少ないだろうとは想像するが、まさかこの1冊だけとは!それこそ、BANIPALのような世界にアラブ文学を知らしめる継続的努力が必要な所以だろう。
この作品がレバノンの文芸誌Hiwarに発表され、徐々に本国スーダンにも漏れ入ってきたとき、あまりに自由で開放的な性表現が国内で騒動となったと言う。それとあわせてLeila Aboulelaさんが、ハルツーム大学の寮で、数部しかないコピーを奪い合って、夜中の1時から3時までに限定された"読書可能時間"に一章ずつむさぼり読んだ、というエピソードを書いているのが印象的だ。活字への渇望。自分たちのは何者であるかを問う文章への渇望。小説や本というものが日本のように溢れ返っていないことにたいして、むしろ嫉妬すら覚える話ではないか。
そのほかの記事で、さっそく読んでみたのが、今年のアラブ・ブッカー受賞作、Youssef Zeiden著"Azazeel"の抜粋英訳。5世紀、ネストリウスが異端として破門され教会の再編が行われた時期の一コプト修道士の苦悩を描いた本作は、本国エジプトでは、キリスト教への冒涜だとしてコプト教会が抗議を続けているといった曰くつきの作品。だが、Abdo Wazen氏による解説は、異教徒が他宗教を批判的に書いてはいけないという狭い了見ではなく、どの宗教にまつわる歴史事象であっても、エジプト人である限り誰でも共有財産としてそれについて語って良いとする、おおらかな姿勢でいたいものだと、この政治的論争に冷や水を浴びせている。
なお、小説の素人が他の大家たちをさしおいて受賞したことに対する侃々諤々にいたっては笑止で、Abdo氏は、この賞が作家ではなく作品に対して与えられるものであり、受賞如何が作家の優劣を即座に決めるものではないと、論争をいさめている。この手の嫉妬はどの世界でもある。受賞作品は英訳出版権を与えられ、著者ともどもアラブ世界を超えて有名になるのだから、名誉心の少しでもある人なら、妬みうらやんで当然のこと。
僕ら読者は、もう少し寝て待っていれば、優秀で熱意のある翻訳者と出版社が英訳本を届けてくれるのだから、それを楽しみに待っていよう。
PR
COMMENT
カレンダー
03 | 2024/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 | 30 |
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
最新記事
(12/26)
(11/23)
(08/04)
(08/01)
(07/29)
最新トラックバック
プロフィール
HN:
すっかる・ちーにー・しゅがー
性別:
男性
職業:
国際文化交流
趣味:
カレー
自己紹介:
インドで4年生活し、今度はエジプトへ!この国の人々の生態、面白情報をお届けします。
ブログ内検索
最古記事
(01/24)
(01/26)
(01/28)
(01/30)
(02/04)
カウンター
アクセス解析