えじぷとの文化、芸術、エンターテインメント堪能記です。
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日本ではダラダラと2年半も社会人向け語学教室に通い、形ばかりの免状をいただいたものの、日常会話ができるレベルにはまったく到達できず仕舞いだった。
そして、カイロ赴任の内示をもらってから赴任までの2ヶ月ばかりで付け焼刃的にエジ方言会話の個人レッスンを受けてきたわけだが、ほんとうに付け焼刃で、到着早々から地元の人々とのコミュニケーションにえらく苦労する日々を送っている。
そんな状況を打開すべく、5月初めより、カイロ大学アラビア語学科の先生の個人レッスンを受けはじめた。
使用教材は、カイロアメリカン大学発行の、「Sabah il Khair ya Masr(おはよう、エジプト)」。2冊セットの上巻を5回のレッスンでほぼ終えようとしているが、各課につき6~7行程度の簡単な会話スキットに比して膨大な量の反復練習問題と単語帳がついているのが特徴。その特徴を最大限に活かして、先生は毎回大量の宿題を課しながら、1レッスンにつき二課から三課を終えていくのだ。語学は反復が命ということに、改めて気付かされている。
だからといって、1ヶ月足らずで劇的にアラビア語が上達した訳ではなく、僕の珍・発言に周囲の人たちが驚き呆れる日々が続いている。
おとといは、夏の現代日本写真展の会場探しのために、「ムバラク公共図書館(Mubarak Public Library)」へ向かう際、事務所の運転手さんに、"Maktaba il Raiis(大統領の図書館)"と言うべきところを、"Maktab il Raiis(大統領の事務所)"と発言。それでも、事前に事務所のスタッフから指示を受けていた運転手さんは、優しく"Haadar(了解!)"と応じてくれたのだった。
今朝は、エジプト国立博物館のそばにあるエジプト・エアーのオフィスのことを自分の運転手さんに説明しようとして、"Mathaf Masr(エジプト博物館)"のところを誤って"Matbah Masr(エジプトの台所)"と発言。運転しながら運転手さんが僕の顔を5秒くらい、穴のあくほど凝視してから、ようやくピンときて、"Mathaf"と言い直してくれた。
こんがらがった頭のまま、ランチタイムに突入。今日はAUCの留学生とダウンタウンのエジ料理店「アラベスク」でランチのお約束をしており、同僚と歩いて向かったのだが、途中で道がわからなくなり、信号待ちのおじさんに質問。
"Matbah Arabesque feen(アラベスクの台所はどこですか)?"
今度は、"Mat'am(レストラン)"と"Matbaf(台所)"の言い間違え。博物館と台所の間違えよりはずいぶんとマシだったようで、おじさんはちゃんと道を教えてくれた。
こうして、日々トンデモ・アラビア語を駆使して、なんとかかんとか、土地の人たちとの会話を楽しんでいる。
そして、カイロ赴任の内示をもらってから赴任までの2ヶ月ばかりで付け焼刃的にエジ方言会話の個人レッスンを受けてきたわけだが、ほんとうに付け焼刃で、到着早々から地元の人々とのコミュニケーションにえらく苦労する日々を送っている。
そんな状況を打開すべく、5月初めより、カイロ大学アラビア語学科の先生の個人レッスンを受けはじめた。
使用教材は、カイロアメリカン大学発行の、「Sabah il Khair ya Masr(おはよう、エジプト)」。2冊セットの上巻を5回のレッスンでほぼ終えようとしているが、各課につき6~7行程度の簡単な会話スキットに比して膨大な量の反復練習問題と単語帳がついているのが特徴。その特徴を最大限に活かして、先生は毎回大量の宿題を課しながら、1レッスンにつき二課から三課を終えていくのだ。語学は反復が命ということに、改めて気付かされている。
だからといって、1ヶ月足らずで劇的にアラビア語が上達した訳ではなく、僕の珍・発言に周囲の人たちが驚き呆れる日々が続いている。
おとといは、夏の現代日本写真展の会場探しのために、「ムバラク公共図書館(Mubarak Public Library)」へ向かう際、事務所の運転手さんに、"Maktaba il Raiis(大統領の図書館)"と言うべきところを、"Maktab il Raiis(大統領の事務所)"と発言。それでも、事前に事務所のスタッフから指示を受けていた運転手さんは、優しく"Haadar(了解!)"と応じてくれたのだった。
今朝は、エジプト国立博物館のそばにあるエジプト・エアーのオフィスのことを自分の運転手さんに説明しようとして、"Mathaf Masr(エジプト博物館)"のところを誤って"Matbah Masr(エジプトの台所)"と発言。運転しながら運転手さんが僕の顔を5秒くらい、穴のあくほど凝視してから、ようやくピンときて、"Mathaf"と言い直してくれた。
こんがらがった頭のまま、ランチタイムに突入。今日はAUCの留学生とダウンタウンのエジ料理店「アラベスク」でランチのお約束をしており、同僚と歩いて向かったのだが、途中で道がわからなくなり、信号待ちのおじさんに質問。
"Matbah Arabesque feen(アラベスクの台所はどこですか)?"
今度は、"Mat'am(レストラン)"と"Matbaf(台所)"の言い間違え。博物館と台所の間違えよりはずいぶんとマシだったようで、おじさんはちゃんと道を教えてくれた。
こうして、日々トンデモ・アラビア語を駆使して、なんとかかんとか、土地の人たちとの会話を楽しんでいる。
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ネットのニュースを手繰っていくうちに、5月10日グリニッジ標準時21:00に世界一斉に映像の祭典が行われることを知った。その名もパンゲア・デイ(PANGEA DAY)。辞書を引くと、PANGEAとは、「大陸移動が起こる前の超大陸」とある。世界が一つだった日に立ち返ろうというメッセージからの命名のようである。
http://www.pangeaday.org/
世界中からのショート・フィルムの投稿を各地で上映し、かつインターネットで放送する。あわせて各地でミュージシャンや社会運動家たちによるイベントも行われる。映像を通して他者を知り、その他者のなかに自分を発見するというようなことが、スローガンとして掲げられていた。
サイトを見るとカイロもイベント会場となるというので、サイト管理者に詳細情報をメールで聞いたりしたのだが、結局最後までわからずじまい。気がつくと5月10日は過ぎゆき、「あー、あのイベント、どうなったのかな?」と思ってウェブサイトを再訪してみると、たくさんの映像でもって結果が報告されていた。カイロでも、確かにピラミッドの近くでイベントがあったらしく、エジプト人らしきひとびとが群がっている映像がチラッと紹介されていた。じぶんの情報収集能力の欠如を痛感して、ちょっと落ち込む。
さはさりながら、このウェブサイトでは、数万の投稿作品のなかから優れたものをストリーミングで見ることができるし、いくつかの会場でのイベントも紹介されているので、興味をもたれた方は見てほしい。
サイトのメニューから"SPEAKERS"を選ぶと、各地のイベントに出演したセレブリティたちの顔ぶれが紹介されている。
そのなかのひとり、Khaled Aboul Nagaは、3月に国際交流基金が開催したアラブ映画祭へのエジプトからの出品作、"In the Heliopolis Flat"の主演男優。ユニセフの親善大使などの役割を通じて、エイズ救済、子どもたちの肝炎防止、女子割礼反対キャンペーンなどといった社会活動をしているのだそうだ。立派な方ですねぇ。
もうひとり注目したのは、Ali Abu Awwad。パレスチナ人で兄弟をイスラエル兵によって失い、自らも足に負傷を負った経験をもつ彼は、その悲しみを怒りとして発露させるのではなく、パレスチナの報復により身内を失ったイスラエル人との対話を積極的に進めている。彼の紹介ページのストリーミングでは、家族を失ったイスラエル女性Robi Damelinと二人で、憎しみの連鎖から自らを解き放ち、互いを許しあうことの必要性を訴えかけている。AliやRobiらの活動を追いかけたドキュメンタリー、"Encounter Point"のサイトにもリンクが貼ってあり、この映画にも興味をそそられる。
この映画の製作を手がけるJust Visionのウェブサイトはこちら。
http://www.justvision.org/
「メディアと教育を通じて、イスラエルとパレスチナの市民の非暴力による平和実現を支援する」
というのが、冒頭から理念として語られている。
"Encounter Point"についても、ただ鑑賞してくれと誘いかけるだけでなく、どうやって自分の生活拠点においてパブリックな上映会、あるいは教育目的の上映会を行うべきかについてのマニュアルを提供しているのが、特徴的。
そして、”What You Can Do"と題されたメニューをクリックすると、彼らのこの運動に対して、当事者ではないわれわれに出来ることを可能性、アイデアとして書いてある。その最後に、「平和構築と非暴力に取り組むイスラエル人とパレスチナ人の団体について知ること」とあり、その下に代表的組織の概略が紹介されている。
絶望せず、平和を実現する可能性を信じて、日夜努力を続けている人たちがいる、ということを知るだけでも、きっと意味のある行為なのだろう。
さて、来年のPANGEA DAYには、参加することができるだろうか??
http://www.pangeaday.org/
世界中からのショート・フィルムの投稿を各地で上映し、かつインターネットで放送する。あわせて各地でミュージシャンや社会運動家たちによるイベントも行われる。映像を通して他者を知り、その他者のなかに自分を発見するというようなことが、スローガンとして掲げられていた。
サイトを見るとカイロもイベント会場となるというので、サイト管理者に詳細情報をメールで聞いたりしたのだが、結局最後までわからずじまい。気がつくと5月10日は過ぎゆき、「あー、あのイベント、どうなったのかな?」と思ってウェブサイトを再訪してみると、たくさんの映像でもって結果が報告されていた。カイロでも、確かにピラミッドの近くでイベントがあったらしく、エジプト人らしきひとびとが群がっている映像がチラッと紹介されていた。じぶんの情報収集能力の欠如を痛感して、ちょっと落ち込む。
さはさりながら、このウェブサイトでは、数万の投稿作品のなかから優れたものをストリーミングで見ることができるし、いくつかの会場でのイベントも紹介されているので、興味をもたれた方は見てほしい。
サイトのメニューから"SPEAKERS"を選ぶと、各地のイベントに出演したセレブリティたちの顔ぶれが紹介されている。
そのなかのひとり、Khaled Aboul Nagaは、3月に国際交流基金が開催したアラブ映画祭へのエジプトからの出品作、"In the Heliopolis Flat"の主演男優。ユニセフの親善大使などの役割を通じて、エイズ救済、子どもたちの肝炎防止、女子割礼反対キャンペーンなどといった社会活動をしているのだそうだ。立派な方ですねぇ。
もうひとり注目したのは、Ali Abu Awwad。パレスチナ人で兄弟をイスラエル兵によって失い、自らも足に負傷を負った経験をもつ彼は、その悲しみを怒りとして発露させるのではなく、パレスチナの報復により身内を失ったイスラエル人との対話を積極的に進めている。彼の紹介ページのストリーミングでは、家族を失ったイスラエル女性Robi Damelinと二人で、憎しみの連鎖から自らを解き放ち、互いを許しあうことの必要性を訴えかけている。AliやRobiらの活動を追いかけたドキュメンタリー、"Encounter Point"のサイトにもリンクが貼ってあり、この映画にも興味をそそられる。
この映画の製作を手がけるJust Visionのウェブサイトはこちら。
http://www.justvision.org/
「メディアと教育を通じて、イスラエルとパレスチナの市民の非暴力による平和実現を支援する」
というのが、冒頭から理念として語られている。
"Encounter Point"についても、ただ鑑賞してくれと誘いかけるだけでなく、どうやって自分の生活拠点においてパブリックな上映会、あるいは教育目的の上映会を行うべきかについてのマニュアルを提供しているのが、特徴的。
そして、”What You Can Do"と題されたメニューをクリックすると、彼らのこの運動に対して、当事者ではないわれわれに出来ることを可能性、アイデアとして書いてある。その最後に、「平和構築と非暴力に取り組むイスラエル人とパレスチナ人の団体について知ること」とあり、その下に代表的組織の概略が紹介されている。
絶望せず、平和を実現する可能性を信じて、日夜努力を続けている人たちがいる、ということを知るだけでも、きっと意味のある行為なのだろう。
さて、来年のPANGEA DAYには、参加することができるだろうか??
エジプトの映画館で初めての映画体験『大統領の料理人』の興奮冷めやらぬうちに、今度はカイロ大学の日本語エキスパートZさんと同僚とで"AL GAZEERA(シマ)"を見に行った。一転してシリアスな内容と聞いており、言葉がわからなくてチンプンカンプンになる恐れがあったので、Zさんをお誘いしてみたら、快諾してくれたのだった。こうして、エジプト映画同好会が発足したのだった・・・
助っ人の登場に安心して前勉強も一切なしで、「シマ」って、どこの島のことだろう?
などとバカなことを思っていたら、日本語でいうあの「シマ」と同じ意味ということが、すぐにわかった。
というわけで、最初から最後まで、全編ハードボイルド。見終わってすぐに、Zさんが
「むちゃくちゃ、エジプト映画っぽいでしょ?」
と聴くのだが、とりあえずこういうのが典型的エジプト映画の一類型としてあることを覚えておこうと思う。
ちなみに、この映画は実話に基づくらしく、つまり20世紀の終わり頃までこうした部族抗争と無法状態での復讐の連鎖がエジプト南部では生きていたということらしい。また、警察のトップがマンスールとの手打ちの自己弁護を語るくだりでは、「原理主義台頭によるテロを防ぐには、マンスールに村を実効支配する力を与える必要があった」と話していた(らしい)。1997年といえば、ルクソール王家の谷で凄惨なテロが起こった年であり、そうすると、マンスールによるシマ支配によるタガがはずれた状態が事件を誘発したということだろうか?
Zさんによると、現在では国家権力が地方部族に村支配を依存し、時には制御不能の「シマ」形成に至るというような状況は起こっておらず、国家によって部族間の緊張やイスラム過激主義といった動きは厳しく押さえ込まれているというが、どうやら大都市カイロとはまったく違った慣習やルールに基づいて生きている人々がいるらしいということは確かである。
ちなみに、この映画"AL GAZEERA"は、先月のエジプト国内映画祭(Egypt National Film Festival"にて第3位受賞。同時に、主演男優賞、主演女優賞、最優秀音楽賞、最優秀写真賞も獲得した話題作だ。最優秀音楽賞のOmar Khairatは、よくSAKIAで公演するようで、今度は5月31日の予定です。
助っ人の登場に安心して前勉強も一切なしで、「シマ」って、どこの島のことだろう?
などとバカなことを思っていたら、日本語でいうあの「シマ」と同じ意味ということが、すぐにわかった。
ところはルクソール近郊の村。3つの部族が抗争を続けるなかで、己の死期を察した村長が一人の若者マンスールを後継ぎに任命する。マンスールが村を治めることを良しとしない部族が様々な妨害をしかけ、果ては前村長の葬式のテントに銃弾を浴びせかける。この攻撃で母をも失ったマンスールは、警察の介入を嫌い、自らの手によって敵の一族を皆殺しにし、復讐を成し遂げる。こうして村の権力を掌握したマンスールは警察のトップと手うちをし、トカゲの尻尾きりとして時々部下を刑務所に送り込む見返りに、麻薬と武器の密輸をほしいがままにし、強大なシマを形成していくのだった。
1997年の列車強盗事件の捜査のため、若き捜査官がシマに送り込まれるが、こうして警察のトップに守られたシマは、一向にボロを出してくれない。そうこうするうちにますますマンスールは力を蓄えていくのだが、彼の力が警察を脅かすところに達しかけたとき、警察のトップは手のひらを反して、彼を消しにかかる。麻薬の取引の現場をおさえ現行犯でマンスールを逮捕する算段だった。ところが、すんでのところで麻薬を積んだトラックだけは避難することができ、マンスールは逮捕を逃れ、そして警察との徹底抗戦に突入していく。
警察側は装甲車まで動員しての徹底的銃撃戦の末、最後にはマンスールは投降し平和が訪れるが、数年の服役ののち出所したところを何者かに銃撃されるところで、映画はTHE ENDとなる。
というわけで、最初から最後まで、全編ハードボイルド。見終わってすぐに、Zさんが
「むちゃくちゃ、エジプト映画っぽいでしょ?」
と聴くのだが、とりあえずこういうのが典型的エジプト映画の一類型としてあることを覚えておこうと思う。
ちなみに、この映画は実話に基づくらしく、つまり20世紀の終わり頃までこうした部族抗争と無法状態での復讐の連鎖がエジプト南部では生きていたということらしい。また、警察のトップがマンスールとの手打ちの自己弁護を語るくだりでは、「原理主義台頭によるテロを防ぐには、マンスールに村を実効支配する力を与える必要があった」と話していた(らしい)。1997年といえば、ルクソール王家の谷で凄惨なテロが起こった年であり、そうすると、マンスールによるシマ支配によるタガがはずれた状態が事件を誘発したということだろうか?
Zさんによると、現在では国家権力が地方部族に村支配を依存し、時には制御不能の「シマ」形成に至るというような状況は起こっておらず、国家によって部族間の緊張やイスラム過激主義といった動きは厳しく押さえ込まれているというが、どうやら大都市カイロとはまったく違った慣習やルールに基づいて生きている人々がいるらしいということは確かである。
ちなみに、この映画"AL GAZEERA"は、先月のエジプト国内映画祭(Egypt National Film Festival"にて第3位受賞。同時に、主演男優賞、主演女優賞、最優秀音楽賞、最優秀写真賞も獲得した話題作だ。最優秀音楽賞のOmar Khairatは、よくSAKIAで公演するようで、今度は5月31日の予定です。
5月9日金曜日。
当地はイスラームの国だから、金曜日は集団礼拝の日でお休み。そういう理由だから日本ではありえない静かな休日を、異教徒のわれわれは堪能することができる。
この日はアテが外れて、ものすごい群集のなかで、7時間、折り紙を折り続けた。
というのも、「文化革命遂行機関」(と筆者が勝手に思っている)SAKIA(EL SAWY CULTURE WHEEL)より、「スーザン・ムバラク大統領夫人と共同で新市街の路上を封鎖して”PEACE EVENT”をやるから、美術作品3点を貸してくれ。それからブースを作るから折り紙ワークショップをやってくれ。」との要請を受けて、事務所スタッフ総勢6名で出動したのだった。
以前も類似のイベントがあったらしく、それを見た同僚によると1万人近くの参加者があったということだったが、恒例化して随分と広く市民の認知を得ているようなのだ。開始時の午後1時はまだ可愛いものだったが、あれよあれよと群集が押し寄せ、午後7時頃の主催者発表では3万人が来場したという。わずか200mばかしの道路に6時間ばかりでこれだけの数が来たのだから、路上は人と人の隙間がないほどに密着して、ただでさえ暑いというのに、とんでもない熱気が渦巻いていた。
そんななか、われわれの折り紙ブースにもひっきりなしに老若男女が訪れ、一人平均20分程度、折り紙という新たしい遊びと親しんでいく。レパートリーを広げすぎるとわれわれのレベルの低さが露呈してしまうので、あえて洋服と箱とかえるの3種類だけを用意して、指導にあたった。参加者は年齢に関わりなく器用さの程度に差があって、用意したアラビア語解説つきマニュアルを見ながら自力でどんどん折って行くものもあれば、まったく自分で開拓する気力なく、ほとんどこちらまかせな人まで様々だった。たいていは、僕らが1枚とって手本を示しながら一緒に折りすすめるというやり方をとった。そんなことだから、7時間の間で僕だけでも50枚以上は折ったんじゃないかと思う。この3種類については、いつでもマニュアルなしで折ることが出きると、自信をもって言える。
休む間もなく折り続けるわれわれに珍しい訪問客が現れた。アレキサンドリア在住のオリガミスト、オマル君。新聞や雑誌で紹介されるほどの実力と活動実績をもつ同氏は、アレキサンドリア、カイロ、アスワン、シーワなど数々の街へ出向いていっては子供たちにワークショップを開いてやっているという。しかも、イケメン。テレビで歌ったり踊ったりしていてもおかしくない。7月からSAKIAではじめる折り紙講座に協力してもらえればと思っているが、あのアトラクティブな顔だけで十分客寄せができそうなのだ(写真がなくて、ゴメンナサイ)。
それにしても、聖なる静かな金曜日に3万人の動員、である。
役所系の舞台やギャラリーに閑古鳥が鳴いているなか、大統領夫人と民間代表SAKIAのユニットが破格のスケールで人々を呼び込むというのが、先日見た映画「大統領の料理人」のプロットを思い出させた。トップが善政を行うかどうかは別にして、トップの威信を上手に使って賢い民間人が面白くて意義のあることを行う。やはり、SAKIAは”静かな革命家”と呼ぶにふさわしい。
翌土曜日は、どこにも出かけず家にいたが、前日の熱が冷めず、キリン、ゾウ、ウサギ、ペンギン、ハクチョウ、旋回飛行機を立て続けに折って、娘を喜ばせた。イケメン・オリガミストには到底かないっこないが、せめて自分の子どもだけでも喜ばせてやりたいものである。
当地はイスラームの国だから、金曜日は集団礼拝の日でお休み。そういう理由だから日本ではありえない静かな休日を、異教徒のわれわれは堪能することができる。
この日はアテが外れて、ものすごい群集のなかで、7時間、折り紙を折り続けた。
というのも、「文化革命遂行機関」(と筆者が勝手に思っている)SAKIA(EL SAWY CULTURE WHEEL)より、「スーザン・ムバラク大統領夫人と共同で新市街の路上を封鎖して”PEACE EVENT”をやるから、美術作品3点を貸してくれ。それからブースを作るから折り紙ワークショップをやってくれ。」との要請を受けて、事務所スタッフ総勢6名で出動したのだった。
役所系の舞台やギャラリーに閑古鳥が鳴いているなか、大統領夫人と民間代表SAKIAのユニットが破格のスケールで人々を呼び込むというのが、先日見た映画「大統領の料理人」のプロットを思い出させた。トップが善政を行うかどうかは別にして、トップの威信を上手に使って賢い民間人が面白くて意義のあることを行う。やはり、SAKIAは”静かな革命家”と呼ぶにふさわしい。
翌土曜日は、どこにも出かけず家にいたが、前日の熱が冷めず、キリン、ゾウ、ウサギ、ペンギン、ハクチョウ、旋回飛行機を立て続けに折って、娘を喜ばせた。イケメン・オリガミストには到底かないっこないが、せめて自分の子どもだけでも喜ばせてやりたいものである。
カイロにやってきた昨年末、車で街を走っているとあちこちに架かる巨大な看板が目にとまった。白い服におきまりの白いとんがり帽子でいかにも料理人といういでたちの恰幅のよいおじさんの横顔が笑っている。タイトルらしきものがアラビア語と英語でかかれていて、英語では"President's Chef"とある。「なるほど、ムバラク大統領の料理人とはこんな人か」と関心していると、そうではなくて、映画の宣伝だと教えてもらった。
おじさんの笑顔があまりにも素敵だったので、この映画は見ておきたいと思っていた。かれこれ4ヶ月以上が経過し、ロングランとはいえいつ終わってもおかしくないので、昨日、初めてエジプトの映画館に足を運んだ。
新聞でみると市内の商業映画館は32件。今回は、事務所にほど近いラムセス・ヒルトン・ホテルのアネックスビル7Fのシネコンを利用してみた。
上映時間は全上映作共通で、15:30、18:30、21:30の三回。平日も休日も同様で、朝に人が動かないことを意味している。料金は25エジプト・ポンドだから、約500円。平均所得が1000ポンド程度とすると、月給の1/40程度だから、映画が高いと言われて久しい日本よりも高い。18:30の回に行ったところ、観客は僕を含めてわずか5人。ダウンタウンから離れた単館だともっと安いのかもしれないが、庶民の娯楽というにはちょっと高めの料金設定かもしれない。
セキュリティは結構タイトで、まず金属探知機をくぐらなければならない。その後、係りの女性に手荷物チェックをされ、カメラと映画鑑賞のお伴にと持参した昼の残りのサンドイッチを没収。帰り際にちゃんと帰してもらえたけれど、飲食禁止とは随分ストイックなものである。一方で携帯電話は持ち込み自由で、おばちゃんの携帯は上映中に何度もピピピと鳴るのだから、取り締まるべき優先順位を間違えてやしないか。
さらには、エアコンの寒いこと、寒いこと、これはインドも顔負けだ。前半は意外と控えめだったのが、後半になるとガンガンに。お客さんの誰かが暑いとか苦情を言ったのかもしれない。
インドとの比較でもう一つ注目すべきは、インターミッション!今回見た映画でも、上映後1時間15分後くらいに、5本ほど、電気がついて、しっかりと休憩が入りました。
前置きとしてダラダラと周辺情報ばかり書きなぐったが、エジプトで映画を見てみたいと思う人には、なにがしか有益な情報と思われるので、参考まで。
さて、映画の内容だが、残念ながら、東京の語学学校の正則アラビア語コースを落第寸前でなんとか消化した程度の語学力では、エジプト方言の普通のスピードの会話を聞き取るのはなかなかシンドイ。自分では1割程度わかるかなと期待して臨んだが、結果は惨憺たるもので、よく見積もっても5%くらいだろうか。
それでも、作品が軽快な状況喜劇で、映像を追うだけでもなんとかストーリーを把握できたのは救いだった。
というわけで、映画はストーリーも面白いし、映像も音楽もマッチしていて素晴らしかったし、言葉がわかれば、どんなにか楽しめただろうかと思う。
最後にあえて、外国人の傍観者がうがった見方をするならば、この映画にも現代エジプトが抱える深刻な問題が現れている。すなわち、「体制批判はほどほどに。大統領批判は刑務所行き。」という周知の事実のことだ。4月15日付け英字紙"EGYPTIAN MAIL"におけるこの映画の紹介記事は、このように書いて、作品がいかに果敢に禁忌に挑戦したかを褒め称えている。
「エジプトの検閲当局は、このタブー破りの作品に許可を与えたことを称えられてしかるべきだ。というのも、この映画が、物価高騰や大量の汚職に対する庶民の抗議が高まっている最中に封切られたからだ。」
しかし、この映画は体制を担う役所の問題にメスを入れ、鋭い批判を浴びせるが、決して大統領を悪くは描かない。大統領は庶民のことを理解しているが、とりまきがそれを邪魔している、という構図である。ムバラク大統領の80歳の誕生日を祝う5月4日の新聞もまた、大統領の国を思っての間断なき尽力に敬意を表するほめちぎりの記事がトップを飾るが、中をめくると物価高騰や汚職に対する批判記事が目白押しだ。
行政を批判はできても、その権限と責任の頂点にいる人物を批判できない。このような政治状況が、人間の表現活動にどのような影響を与えるか、よその国を題材にしてみると、それがよくわかる。そして、自分の国にもまた似たような問題があることに、思いを致さないわけにはいかない。
ボリウッドほどではないにせよ言葉がわからなくても楽しめるし、いろいろ考える機会を与えてくれる初のエジプト映画館体験だった。
おじさんの笑顔があまりにも素敵だったので、この映画は見ておきたいと思っていた。かれこれ4ヶ月以上が経過し、ロングランとはいえいつ終わってもおかしくないので、昨日、初めてエジプトの映画館に足を運んだ。
新聞でみると市内の商業映画館は32件。今回は、事務所にほど近いラムセス・ヒルトン・ホテルのアネックスビル7Fのシネコンを利用してみた。
上映時間は全上映作共通で、15:30、18:30、21:30の三回。平日も休日も同様で、朝に人が動かないことを意味している。料金は25エジプト・ポンドだから、約500円。平均所得が1000ポンド程度とすると、月給の1/40程度だから、映画が高いと言われて久しい日本よりも高い。18:30の回に行ったところ、観客は僕を含めてわずか5人。ダウンタウンから離れた単館だともっと安いのかもしれないが、庶民の娯楽というにはちょっと高めの料金設定かもしれない。
セキュリティは結構タイトで、まず金属探知機をくぐらなければならない。その後、係りの女性に手荷物チェックをされ、カメラと映画鑑賞のお伴にと持参した昼の残りのサンドイッチを没収。帰り際にちゃんと帰してもらえたけれど、飲食禁止とは随分ストイックなものである。一方で携帯電話は持ち込み自由で、おばちゃんの携帯は上映中に何度もピピピと鳴るのだから、取り締まるべき優先順位を間違えてやしないか。
さらには、エアコンの寒いこと、寒いこと、これはインドも顔負けだ。前半は意外と控えめだったのが、後半になるとガンガンに。お客さんの誰かが暑いとか苦情を言ったのかもしれない。
インドとの比較でもう一つ注目すべきは、インターミッション!今回見た映画でも、上映後1時間15分後くらいに、5本ほど、電気がついて、しっかりと休憩が入りました。
前置きとしてダラダラと周辺情報ばかり書きなぐったが、エジプトで映画を見てみたいと思う人には、なにがしか有益な情報と思われるので、参考まで。
さて、映画の内容だが、残念ながら、東京の語学学校の正則アラビア語コースを落第寸前でなんとか消化した程度の語学力では、エジプト方言の普通のスピードの会話を聞き取るのはなかなかシンドイ。自分では1割程度わかるかなと期待して臨んだが、結果は惨憺たるもので、よく見積もっても5%くらいだろうか。
それでも、作品が軽快な状況喜劇で、映像を追うだけでもなんとかストーリーを把握できたのは救いだった。
主人公は、庶民の住む旧市街で路上で非合法に屋台を営む料理の達人。コメディ役者として人気のあるタラート・ザカリア(Talaat Zakaria)が演ずる。もう一人のメインアクトが、大統領。ハーレド・ザキ(Khaled Zaki)という往年の名優で、ロマンス・グレーの実にカッコイイ役者さん。大統領は、「安全上の理由から」ということで、側近や警護官に遮られ、国民の肉声からいつも遠ざけられているのだが、本人もそれを知っていて、なんとか自分の目で実情を知りたいと思っている。ある日、お忍びで町に出かけたときに主人公の料理人と知り合い、彼の料理と「庶民性」を見込み、自分の料理人として指名することになる。こうして大統領は、物価高騰、配給のパンの劣悪化、下級役人の汚職など、庶民を苦しめる様々な問題の実情を、彼をとおして理解し、次々と改革案を出していく。面目を失い、かつ大統領に忙しくさせられた側近たちは事態を疎んじ、なんとかして大統領と料理人を遠ざけようとするのだが、ある日、料理人の彼がC型肝炎の保持者であることが判明し、あえなく、お役ゴメンとなってしまったのだった。こうして、一国の最高指導者と貧民街の料理の達人の奇跡的な友情は、夢のごとくに終焉を迎えた。
というわけで、映画はストーリーも面白いし、映像も音楽もマッチしていて素晴らしかったし、言葉がわかれば、どんなにか楽しめただろうかと思う。
最後にあえて、外国人の傍観者がうがった見方をするならば、この映画にも現代エジプトが抱える深刻な問題が現れている。すなわち、「体制批判はほどほどに。大統領批判は刑務所行き。」という周知の事実のことだ。4月15日付け英字紙"EGYPTIAN MAIL"におけるこの映画の紹介記事は、このように書いて、作品がいかに果敢に禁忌に挑戦したかを褒め称えている。
「エジプトの検閲当局は、このタブー破りの作品に許可を与えたことを称えられてしかるべきだ。というのも、この映画が、物価高騰や大量の汚職に対する庶民の抗議が高まっている最中に封切られたからだ。」
しかし、この映画は体制を担う役所の問題にメスを入れ、鋭い批判を浴びせるが、決して大統領を悪くは描かない。大統領は庶民のことを理解しているが、とりまきがそれを邪魔している、という構図である。ムバラク大統領の80歳の誕生日を祝う5月4日の新聞もまた、大統領の国を思っての間断なき尽力に敬意を表するほめちぎりの記事がトップを飾るが、中をめくると物価高騰や汚職に対する批判記事が目白押しだ。
行政を批判はできても、その権限と責任の頂点にいる人物を批判できない。このような政治状況が、人間の表現活動にどのような影響を与えるか、よその国を題材にしてみると、それがよくわかる。そして、自分の国にもまた似たような問題があることに、思いを致さないわけにはいかない。
ボリウッドほどではないにせよ言葉がわからなくても楽しめるし、いろいろ考える機会を与えてくれる初のエジプト映画館体験だった。
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すっかる・ちーにー・しゅがー
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男性
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国際文化交流
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カレー
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インドで4年生活し、今度はエジプトへ!この国の人々の生態、面白情報をお届けします。
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